コラム

格差社会:避けるべきキャリアパス
格差社会では才能や努力にかかわらず、這い上がれない溝に落ちる危険があります。生き残るためには、このような危険を見抜く力も必要です。この章では避けるべき危険な状態について考察していきます。

1章ではweb業界では残業代がきちんと出るなど、派遣社員にもそれなりにメリットがあることを記しました。しかし派遣社員の致命的な問題は「出世がない」点です。2章では生き残るためにはディレクターや取締役に出世する必要があると記しましたが、そのキャリアパスが使えないのです。ですから正社員を目指しましょう。

しかし初心者は正社員になれず、派遣社員しか選択できないことがあります。その場合は転職活動を見越して、ポートフォリオ(仕事の実績集)が作れるような職場を選択しましょう。web業界では勤続年数は意味がありません。これまでどの様な仕事をしてきたか「実績」が重要なのです。

重ねるべき実績ですがコーディングだけではダメです。web業界ではデザイナーでもコーディングができて当たり前です。前章で「将来的にディレクターを目指さなくてはいけない」と記していますが、コーディングしか出来ないとディレクターへの出世も難しいでしょう。ですからデザインやFlashも担当できる職場を探しましょう。ポートフォリオとしてデザインやFlashの案件を提出できるように実績を重ねられるのであれば「当面は」派遣社員でよいでしょう。

「当面でも」避けるべき職種は「更新作業」です。この職種はポートフォリオが作成できず、大抵の制作会社では実績として扱って貰えません。この職種で時間を浪費するのはかなり危険なので、よほど追い詰められない限り1ヵ月たりとも選択すべきではありません。

前章ではキャリアとしてディレクターが重要と記しました。昨今の転職サイトでは、初心者でもいきなりディレクターとして採用してくれる会社があるのですが、この職種も危険です。ディレクターとはプロジェクトを円滑に進めるための現場監督です。長年の経験と知識が必要になるのですが、なぜ初心者でも良いのでしょうか?

代理店は営業によって取得した案件を制作会社に制作依頼します。きちんとした代理店は工数をかけてクライアントの要望に応える素敵なプランを練り上げ、詳細を詰めた上で制作会社といっしょにプロジェクトを進めます。

しかし中には利益の追求に走る代理店があります。もちろん資本主義社会なので利益に走るのは当たり前で、犯罪でもなく非難すべきでないのかもしれません。しかし、その影響が自分に不利益を与えるのであれば近づかないようにすべきでしょう。

このような代理店は丸投げに近い形で制作会社に仕事を渡します。ですので代理店内の工数はかなり少なくなり利益効率はアップします。この仕組みは強力な営業力さえあれば、あとはクライアントと制作会社をつなぐ「初心者でも可能」な伝書鳩的ディレクター(大抵は派遣社員)がいればよいのです。つまり工数が削減できるだけでなく、安上がりな人材を利用できることで代理店は非常に効率よく利益を上げられるのです。

この仕組みは代理店にとっては有益なのですが、そのしわ寄せは制作会社にいきます。頻繁に繰り返される仕様変更、無茶なスケジュール、無茶な予算、そもそも不可能な企画...。

そして派遣ディレクターにとっても不幸です。このケースのディレクターは初心者でよいのでいくらでも代わりがいます。給与も上がらなければ、出世もありません。転職しようにも制作者のスキルも磨けませんし、連絡係でしかないのでポートフォリオも作成できません。前述の代理店と取引のあるような制作会社では、そういったディレクターがあまり役に立たないことを理解しているので、ディレクターとしての実績も見て貰えない可能性もあります。

このような名ばかりのディレクターとして実績を積めないまま時間を浪費するのであれば、後述のブラック企業やデザインやFlashを担当させて貰える派遣職のほうがマシではないでしょうか。
ただしディレクターとして、目に見える実績(企画書や提案書、サイト設計書、デザインラフなど)が積み重ねられるのであれば、転職に有利になるので「当面」は良いかもしれません。

フリーランスも避けるべきキャリアだと思います。1章では年齢によるデメリットが他の業種より大きいと記しました。2章では、そのデメリットを回避するためにディレクターに出世、チームでの協力が必要なことを記しました。フリーランスは一人なので、このデメリットを回避することができません。だんだん時代に付いていくことができなくなり、仕事以外に費やす時間が増え、年収は年を重ねる毎に下がってしまうのではないでしょうか。
ただし既婚女性などが在宅で仕事を続けるにフリーランスは良いでしょう。

年収が下がりフリーランスで食べていくことができなくなってしまったら、就職活動をしてもかなり難くなるはずです(年齢が高く時代遅れのテクニックしか使えない人材を雇うところは少ないでしょう)。フリーランスになるのであれば、法人化して人を雇い、チームとして戦えるようにすべきだと思います。

1章で資本家は既得権を守るために活動すると記しました。これを理解していないと、どんなに素敵なデザインを作れても、どんなに高度なFlashを作成できても、搾取され使い捨てにされる危険性があります。

勤続年数が長いのに微々たる昇給しかない。仕事が忙しくてもアシスタントを付けてくれないので、時間に余裕が無く新しい知識を修得する暇がない...。たとえ会社が搾取のつもりでなくても、こういう扱いであれば(時間とか人生を)搾取されていると考えるべきです。

何かを修得するために努力することも大切ですが「それだけで満足しないでください」。自分の将来、キャリアパスをしっかり見定めておかなければいけません。

毎日終電は当たり前、納期前では徹夜や休日出勤もあり。その上残業代はまったくでない。世に言うブラック企業というものですが、場合によっては派遣よりも優先して選択すべきです。

転職しつつキャリアを進めるためには、実績が何より大事です。もし上記のような企業でもたくさんのデザインやFlashの実績を積めるのであれば、ブラック企業だろうと飛び込むべきです。ですが、コーディングしか担当させて貰えないような実績の積めないブラック企業は避けましょう。それと、身や心の弱い人はやめておきましょう。

私が最初に入社した会社(今では立派な上場企業)では、1ヵ月に4日しか家に帰れないときがありましたし、社長に朝練するから朝の6時に出社しろといわれたりしました。私の上司は仕事の途中で点滴を打ちに行ったりしてましたし、プロジェクトの途中で失踪する人もいました(その穴を埋めるべく新人の私に白羽の矢が立ち、前述の社長との朝練につながるのです)。ですが急速にスキルアップすることができました。

避けるべきキャリアばかりでコラムを終えるのは後味が悪いので、最後に入社すべき会社について記したいと思います。2章では会社の取締役になりましょうと書いていますが、どのような会社を選べばよいのでしょう。知名度?売上?将来性?色々あると思いますが私は「尊敬できる、目標となりうる人がたくさんいる会社」を選ぶべきだと思います。

具体的に「こういう人を尊敬しましょう」とは言えません。人によってどのような人を尊敬するかは異なります。尊敬できるということは、自分の価値観の延長にその人がいて、価値観も近いはずです。異なる価値観では相手がどんなに優れた人でも長く仕事をする事は出来ないでしょう。取締役になるまで、定年になるまで、仕事を共にしていくには尊敬できるということが、とても重要だと思います。ある程度の転職は必要です。その中で尊敬できる人たちがいる会社に巡り会えたら、その会社に骨を埋めるつもりで人生を重ねていけばよいと思います。

開業して3年、たくさんの生徒さんとお話しさせてもらい、このコラムのようにうまくいかないことがあるのは理解しているつもりです。しかし、どんなに現状が厳しくても現状だけに捕らわれず、長いスパンでの視点も持つべきです。
3章に渡り長々と記してきた「コラム:格差社会」もこれで終わりですが、また何か思いついたら4章とか書くかもしれません。このコラムが少しでも皆様の役に立てれば幸いです。

2009.5/23

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